アールグレイのこと/栗山透
テーブルに置かれた
あなたの両手を見ていた
細ながく 筋張った指
私からいちばん見えやすいように
そこに置かれている
わざとじゃないのかもしれないけれど
少なくとも そう感じる
いつもそうだ
確信は持てないけど
少なくとも そう感じる
まっくろくろすけ みたいに
確信は持てないけど
そこにいるように 感じる
月が綺麗だねってあなたが言ったら
ぼやけた月でも 綺麗に感じる
珈琲がいちばん好きなのに
ついアールグレイを頼んでしまう
雨がいちばん好きなのに
曇り空をぼんやり見てしまう
夜の海はこわいのに
闇に揺れる波を掴まえたくなる
何を言い淀んでいるのか
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