テンパラメンタル/みけねこ
 
触と、硝子瓶越しに揺らぐ静かな青い空を見つめていた。
 こういうセンチメンタルは宝物に似ていたけれど、宝物ではなかった。世界はきらめいていて、悪い気分がする訳がなかったのに、私はいつも、胸の隅に燻るぶっそうな胸騒ぎを哀しんでいたのだった。

「ねぇ?あなたさぼりなの?」 

 ふと、声をかけられた。透き通る硝子の反響音のような声だった。

「誰?」

 振り返ると、リカコがいた。リカコは屋上の扉の前に立って、私を見つめていた。白くて華奢な体躯と、漆黒の瞳が、私のちっぽけな五感を奪った。

 一瞬、春の風の匂いと、コンクリートの埃と、頼りないチャイムと、ビー玉をいちどきにまぜて
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