テンパラメンタル/みけねこ
 
 それはある春の日の出来事だった。
 
 私は通学の途中で、満開の桜並木の中を、花びらを拾いながら歩いていた。
 飛び散る花弁はそれで一つの死骸だった。
 小瓶に詰めると、次第に赤茶けて朽ちていった。
 季節を越えて桜は乾いた一本の木になる。
 機械仕掛けの春、土のにおい、坂道、校庭、あかるさ。
 
 私はセーラー服を着た一人の少女だった。
 
 重たい学生鞄の中の、花びらと蝶の死骸を詰めた硝子瓶を眺めながら、屋上でエリュアールを読んでいたかもしれない。
 
 校舎のてっぺんはゆるやかで、哀しみとやさしさを身体じゅうで感じることができた。
 風の匂いとコンクリートの感触と
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