森の中にいる/栗山透
」
半ば呆然として返事をした
声は鼓膜に張り付いたまま
しばらく取れそうにない
「どこに行ったのかしら
おじいちゃん」
僕の目の前には
相変わらず暗闇が広がっている
右手はすっかり冷たくなった
僕は意識をもういちど集めようとした
空はどんよりと曇っている
どうやら雨は降らないようだ
雨が降っても良かったのに
と、僕は思った
「あなたは何をしてるの」
君はさっきよりも遠くから声を出した
僕は森の中にいる
葉っぱの擦れる音はもう聞こえない
あれから余りにも時間が経ったのだ
僕は森の中にいる
そこに君も居てほしかった
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