森の中にいる/栗山透
 

サイレンよりも強烈に
耳に届いてしまう

「どうして僕らは
すり減っていくんだろう」

簡単なことだ
と、僕は思った

森の中はいつもに増して暗かった
幻想的でない ただの暗闇だ
しかも雨が降りそうだった
僕は傘も懐中電灯も持っていない
もちろんだ
持っているはずもない
緑の匂いはますます濃くなる
虫の鳴き声が聴こえる
みんな予定にない来客に
顔をしかめているようだった
ごめんよ、と僕は口に出して言った
邪魔をしに来たわけじゃないんだけど
ここに来ないわけにはいかないんだ

「うちの家系は」

急に君は喋りはじめた
僕は歩くのをやめて意識を集
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