森の中にいる/栗山透
 
森を歩いている
もちろん君といっしょだ
姿は見えなくても
しっかりと手は繋いでいる
この森に来るのは何回目だろうか
岩の転がる広場への道のりも
もうなんとなく覚えている
緑の濃い匂いのする森を
僕らは黙って歩いている
右手の感覚は
あたたかくなったり
つめたくなったりを
繰り返している
僕は時々右手を確認する
いつもの手だ
大きくも小さくもない
細くて筋張った ETみたいな指
僕は恐々と閉じたり開いたりする
ぐーぱーぐーぱー
そしてまた手を繋ぐ

「思い出は
日に日に増えるのに」

僕は何かを考えているようだった
この森の中では 自分の心の声は

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