バタバタ/yamadahifumi
 
私の無を知っているのは、私一人だからだ。これが拡散されると・・・。

私は存在しない。私は無だ。そして、この言葉は・・・誰にも向けられてはいない。私は今、『存在すべき』でない言葉を作ってしまったのだ。こうして・・・。もし、私やペソアのような人間が発語しなければ、この世界のシステムは完璧だったろうに・・・。私達はそれにヒビを入れて・・・・・・・・。

恨むこと、うらやましがる事、そして破壊する事でさえも、システムの網の目をくぐり抜ける事はできない。それは逆に、システムを強化する。・・・何故って、我々の意識そのものが、一つの社会的構造にすぎないからだ。

だから、私は、私が無だと表明する事によって、私は私の意識という社会体から逃れうるのだ・・・。

さよなら、世界よ。そして、私は開け放たれた窓から、もうとっくに死んだ、消えたはずの鳥となって、存在しないはずの青空へと出てゆく。その羽ばたきは、私の見えるはずのない目によって、はっきりと確認される。私は結局、私という名の、不在の青空を飛ぶ一羽の拙い鳥なのだ・・・・・・・。
 
さよなら。



バタバタ。



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