近視の夜歩き/凍湖(とおこ)
眼鏡をはずし
目の前を水中に沈めれば
外灯は滲み
ひとびとは陽炎になって
せかいはちいさくちかく、まるくなると
おもっていたけど
無限のひろがり
おとこもおんなもなく
泳ぐような身体の軸が
あられもなく浮かび上がり
虫の声、コンビニの店内放送、電車の音が
ちかくもとおくも重なりあい
伸び縮みをする。
眼鏡をはずせば
さまざま景色が
煮込んだシチューの具のように
細かいかたちはわからねど
それぞれ、角を立てるでなく
完全に混じるでなく
ぷつぷつ
ぷつぷつと
隣りあっている。
近視のよるは
おおまかの流れにのって
以前よりはっきりと、意識する
お隣さんの存在、お隣さんへのひろがりを。
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