ないしょ話/梓ゆい
少しだけ強引に肩を抱きながら
唇が重なる。。
零れ落ちた独り言を
最後まで聞かれていた。。
ぬるりと動く舌を味わいながら
頬をなでる手のひらは
俯きそうになる顔を上げて
ビールジョッキの曇りが水滴に変わり
シルバーのトレンチに水溜りを作る。。
その水を人差し指ですくい
目線と同じ高さの唇に押し当てて
ほてりのさめた頬を離す。。
決して合わすことの無い目線は宙を仰ぎ
時折触れる肩だけが
スキンシップを求めてくる。。
(俯いたままのふたり。。)
今は静まり返る閉店間際のホール
かすかに聞こえるざわめきだけが
固まる心をほぐしてゆく。。
戻る 編 削 Point(0)