ゴロツキさん/栗山透
 
もなく哀しくなる
湖のほとりでゆっくりと息を吸う
心臓の動く音が聴こえる
水面はゆらゆらと揺れている
「当たり前のことだよ」
何年も昔の自分の言葉を思い出す
いったい何が当たり前なのか

ゴロツキおじさんは
試しに自分の口角をあげてみた
きっとうまくはできていない
あのひとみたいにはできない

「あなたから
優しさを取ったら骨しか残らない」
昔言われたことがある

骨だけ

水面に両手を照らす
しわくちゃの手 爪も伸びている
血の匂いのする指先

骨だけ
になったのだ
うん
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