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二人の髪が暴れている。
「てかさー」
片方の女子が、髪の毛を押さえつけながら言った。
「ニッポンに生まれてきてよかったーとか思う?」
もう片方が、けらっと乾いた笑いを一声、「なにそれー」で流そうとする。
「あたしさー」
流そうとするのを流して、髪を押さえている女子が続ける。
「アメリカ人になりたかったなー」
トラックが左折した。押さえている手からはみ出た髪がひときわ大きくあおられて、長いまつ毛と青みがかった瞳があらわになった。つんと尖った鼻に、細い髪が巻きつく。
「中途半端じゃん? あたし」
もう片方の女子が、笑みを顔に張り付かせたまま、しんと黙った。
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