君の好きな歌を/栗山透
傷だらけの赤い液体を
大事そうに抱えてる君と
言葉ではなにも伝えられないぼくが
ぐらり 抱きあって よろけている
仲のいい酔っ払いみたいに
ふたりしてよろけている
酔えるのならば実は簡単だ
ぼくらはお酒にとてもとても強い
美しくも巨大な魂は
君の小さく華奢な体では
おそらく収まりきらない
口から 毛穴から 涙腺から
魂は今にも飛び出さんとしている
「心がぎゅっと苦しくなったら
思い切り歌うといい」
「魂を解放する方法は
歌うことか 喋ることだけなんだ」
「だから思い切り歌うといい」
「下手でもいいから」
「いつもの帰り道で 君の好きな歌を
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