あなたが初めて泳いだ夏/夏美かをる
たの夏が
足早に通り過ぎようとしている
二年半かけて丁寧に丁寧に実らせ、あなたが自らの手でもぎ取った
鮮やかに光るその尊い果実を そっとバックパックの底にしのばせて
あなたは間もなく四年生の教室への階段を上っていく
少しずつ遠ざかっていく まだ頼りない背中を
追っていくことは もう私にはできない
来年の夏が逝く頃にはあなたは息継ぎを覚えているのだろうか?
私の何メートル先で あなたはくるりと振り返って
あの時と同じ笑顔を 私に贈ってくれるのだろうか?
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