夏の夜の海辺、回帰、再生/eyeneshanzelysee
 

わたしの砂浜、波打ち際に
いちばん美しい波が寄せてきたころ。
月の腕にあやされた赤い花花の
うっそうとした香りは風にまかれ
わたしの刻んだ足跡も
すっかり消えてしまった。


雨が絶え間なく降り続いたあと。
ここには、軽やかで屈託のない
ネイビーブルーの夜空だけが
波のうねりの速度を知っているかのようだ。
わたしはまた愚かにも
砂浜を歩いている。

月がわたしのあとをついてくる。
花は汗ひとつかかず
清潔に揺れ、
ひどく小さなその手で
風と風を切り分け
浜辺に律動をうむ。


わたしは
歩いている。
歩いている。
歩いている。


いち
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