ネゴシエーター/salco
得策と判断したのか
大人になったらこれが謎だ
がら空きバスでホテルを後にし
国際線搭乗口で別れを告げ
三人は機上の人に
残り二人は展望デッキでソフトクリームを買ってもらい
鉄柵に張りついて眺める機体の巨大
パンナム水色の地球、日本航空赤い鶴
KLMはオランダ航空、紺の帆船は全日空
横腹と尾翼を色とりどりに
もう飛び終えたかのような安穏に居並ぶ
父が指す機体に目を凝らして窓を辿ると
髪の長さで姉とわかった
手を振ってみたが気付かないのか
もう取り返しのつかない所にいて
もうすぐ空へ旅出てしまう
いよいよ赤いノースウエストが滑走路へ向け
複雑なジグザグをのろのろ、淡々と遠ざかり
スタート位置で機首を右手に向き直ると
小さな陸上選手みたいに静止した
やおら耳をつんざく金属音を轟かせて疾走を始め
滑走路の先でおもちゃみたいに地を離れた
上空を半旋回して点となった機影が青に溶けるまで
私は涙をこらえていたが無論
危篤の祖母がピンピンしているのを知っていた
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