ネゴシエーター/salco
 
かったら今から来ないか
ではモーニングを食わせてやるから明日来い
私はホテルに泊まってみたかった


モノレールで羽田に向かうと
すっかりうらぶれた中層ホテルが見える
時流の番外地でぼってり塗装を重ねただけの
自動車教習所かタクシー会社と見まごう今と違い
当時は白亜の豪奢だった
シャンデリアのクリスタルが恭しい煌きを乱反射する
革のソファが配されたラウンジレストラン
私と弟は生まれて初めてホテルの分厚いトーストとオレンジジュース
半熟のさまも典雅なハムエッグを食べ
恥を知る父はロビーで待っていた

鼻の穴から煙をくゆらせ
ふんぞり返ってコーヒーを流し込む母
ウエ
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