ネゴシエーター/salco
 
一九七〇年八月
母は二十何年かぶりの帰省を決行した
復帰前の沖縄
前回は渡航制限とフトコロ事情で
密航とはいえ鼻息荒いものだった
東京で贅沢させてやるとたぶらかし
花もはじらう妹二人に掃除婦と釘拾いまでさせ
生涯の恨みを買ったが
今回は日米両国に臆する事なく
パスポートを取り予算をドルに換え
小学生の長女と長男を伴った

小商いを夫に譲り
家計の安定化を図って小出版社に就職し
美術全集二十巻と文学全集百二十巻余
この自腹を以て営業成績とし
半年ほどで辞めた後
宮崎県の免許で時間講師と産休補助の教職に戻り
一年余
問屋で値切る吝嗇に油を注いで節約を重ね
下の二
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