夏のハレツオン/灰泥軽茶
 
ゴロゴロ鳴って
色とりどりの
ヨーヨー風船が落ちてきたような
夏の破裂音

軒下も見つけられずに
人気のない家の庭先にある
大きな木の下へ滑り込むと

浮世絵の世界が音も吸いこんでいき
時間の感覚がなくなっていく
平面的な感覚に
私は淡々と風景に滲み出ていき
先の細い毛筆で解されていく

誰もいない家から
戸が開きおばさんが何か言っているのに気づく
私は笑顔ですぐ出ますと大きな声で返事をし

雨の落ちる音を拾っていく
葉っぱを叩く音を拾っていく
風の音をたくさん集めて拾って
マンションのエントランスに転がりこんで
一息つけば

雲がうねり
さあさあと流れていけば
あれまあと何事もなかったような青い空に
私も何事もなかったように
びしょ濡れの身体と
さっぱりとした気持ちで外に駆けだしていく













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