朝の日記 2013夏/たま
その原っぱに介護施設ができるという
戦前戦後の飢えを生き延びた人びとが
冷めたテーブルの席で、午後のおやつを待つ
ひもじくても
ひもじいと、言えない老後
それはおやつではなくて
帰りたくても帰れないふるさとの野山のような
遠い風景なのだ
たとえば、十九の夏を
わたしは蝉のように生きたと
今になって気づく
ほんとうにひもじい夏はこれからやってくる
もうすっかり、覚悟はできているはずだ
どんなに
ひもじくても
おやつのある老後はいらないと
生きて
生きて
生き延びて
せめて、もう一度
縄文の海辺にもどってわたしたちは死にたい
ひとの手垢を知らない放射線を浴びて
たったひと夏でもかまわない
ひもじいといって
啼く蝉はいないのだから
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