朝の日記 2013夏/たま
 
ひもじいといって、啼く蝉はいない

白亜紀の時代から
ひとはひもじい生きものだったという
そのひもじさに耐えて、恐竜から逃れて
生き延びることのできる生きものだったという

生きて
生きて
生き延びてと、ことしの蝉は啼きさけぶ
白亜紀は無理でも
せめて、縄文の海辺にもどりたい
たとえひもじくても
そこには汚染を知らない海がある

いつもなら、蒼い稲穂に花が咲くころ
その花粉の香りにつつまれて
夏の朝を迎えているはずなのに
もう、田んぼとは呼べない雑草の
生いしげる原っぱ
も吉や、れんちゃんとともに
二十年あまり親しんだ田んぼが
面影もなく消えた


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