森は秋の支度をしていた/そよ風
 
夏の終わり

何かし忘れたようで
少しあわてる
あわてながら、また微睡む
麦茶をのんで
また微睡む
日もくれて
またあわてる

そうしていると
夏が終る

ある夏の日
夏が終るのが惜しくて
一晩中不忍池にいた
真夜中
みんな寝静まり
森だけが呼吸を続ける
森は秋の支度をしていた

少し泣いた

それは恋の終わりと
似ていた

きっと人生の終わりとも
少し似ているかもしれない

夏が終り
これからいくつ
あの日の事を思い出すのだろう

なんでもない
一日の事を
毎年毎年思い出す



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