森は秋の支度をしていた/そよ風
夏の終わり
何かし忘れたようで
少しあわてる
あわてながら、また微睡む
麦茶をのんで
また微睡む
日もくれて
またあわてる
そうしていると
夏が終る
ある夏の日
夏が終るのが惜しくて
一晩中不忍池にいた
真夜中
みんな寝静まり
森だけが呼吸を続ける
森は秋の支度をしていた
少し泣いた
それは恋の終わりと
似ていた
きっと人生の終わりとも
少し似ているかもしれない
夏が終り
これからいくつ
あの日の事を思い出すのだろう
なんでもない
一日の事を
毎年毎年思い出す
戻る 編 削 Point(1)