残暑/ねなぎ
 
蝉音が
廻っているので
道だったか
思い出せない

ゆるゆるとした
茹だるような
立ち上ぼりに
はっきりとしない水分が
揺れて
ゴム草履の底すら
粘るような
砂利道と
踏みつけた草の
青臭い音が
着いて
離れず
あやふやな匂いに
蒸せる

道すがら
眺めた水平線の
丸さに
歪んで
松明のはぜる色に
消えるように

かつて
歩いていたであろう
道の心細さは
照された木漏れ日の
線香の香りに
迷い
指を蟻が伝うように
汗となって
記憶が流れて行く

確かに
不確かさが
嘗ての
勝手な振る舞いすら
懐かしむ
夏から

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