poetarot(皇帝のカード)保存版/みつべえ
 
名前を。暗殺者に告げる。



雷雨に冷やされて、束の間。世界の、全景が倒立する。コロシアムでは、善とも悪ともつかぬものたちが。たがいの足を、ひっぱりあっている。似たもの同士なのに。日曜日がきても。私は、あいかわらず。逆さまに吊られている。



謁見の間で。異邦から帰還した、老詩人に会った。旅の歳月に、はぐくまれた。ゆたかな、あごひげ。膝までとどく。そこから。土産の豆鉄砲をだすと、いきなり。玉座の上の、鳩時計を撃った。「この国の時間は狂っております」と言った。



迷路は。たくさんの、つきあたりをもつ。出口はひとつ。ではなく、ふたつ。だって、入口からも出られるから
[次のページ]
戻る   Point(2)