色と羽/木立 悟
 





遠く水が閉じるところ
遅い秒針をかきわけ追いやり
夜は夜に身を起こし
剥がれこぼれる光を向く


すべてが昇る夕暮れに
ひとつ落ちる冬の爪
おまえは銀を忘れたというが
隠しきれない火をにじませている


鳥が帰る陽 無数の火の影
長くたたずむものを溶かし
あたりを見知らぬ笑みに満たす
偽の冬を売る 白い轍たち


曇が曇をすぎ
灰を鉛を銀をすぎ
何も残さぬまま土に降り立ち
多重にひらく夜明けを見ている


翼はまた尖塔をすぎ
見えない土煙の音を聴いた
海も陸も 変わりながら変わらず
それを記すものばかりが年老いた



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