ポスト (想起させるものに、忠実に)/
乾 加津也
あなたの立てたポストは脆く
内も外も、やまない雨に濡れそぼつ
底冷えに、這いつくばった無音の小部屋の
差込口は狭く
取出口は固く
錆びた金具
動かない
こころの番地(アドレス)は、もう消えて
しなやかな睫毛で振りはらう
春風と、木洩れ日
夏の、蝉
― あなたはシェード、景色すら厭わしい ―
自転車をおりる
わたしはそれでも
この葉書を、落とそう
戻る
編
削
Point
(9)