真夏の影/キダタカシ
 
高く登った太陽が
より濃く写す真夏の影
それは微睡む、眩む昼下がり

汗ばんだ首をそっと撫でる風
窓際の儚く揺れる竹簾
それは蝉時雨の白昼夢


向かいの酒屋で風鈴鳴れば
土佐錦、ふわりふわりと宙を舞う

遠くの神社で龍笛鳴れば
艶やかな狐の嫁が立ち止まる


美しく歪んだ意識は空に溶け
神秘に佇む不安の陽炎

唯一の頼りは引き出しの中にある
君がくれた手紙と御守り


うちわ越しの雲の峰

七日目の命の灯火

甘い泡沫の氷菓子


銀色の後悔と
硝子の希望

”此れで良い“と呟いて


高く登った太陽が
より濃く写す僕の影

それは微睡む、眩む昼下がり
それは蝉時雨の白昼夢
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