音の無い時間には血液の足音が聞こえる/ホロウ・シカエルボク
概念上の自動拳銃の引鉄が脳下垂体のなにがしかに風穴を開ける時、眼球はコントラストのバランスを僅かに淡くして、忘れられた観賞用水槽の中の、小魚の死体を含んだ腐った水のような白になる、ゼラチン質の感覚に沈み込んでいく惰眠のあとの曖昧なフォーカスの肉体、表に流れ出してこない血液がいつまでもうろついている、その足跡はいつまでも赤く、広い刷毛で塗りつけられた塗料のように強固で、そう、言うなれば、俺の体内はそんなアスファルトで執拗に舗装されている、音の無い時間には血液の足音が聞こえる、暗いワン・トーンのアルトサックスの音色のような…クロージング・タイムを迎えたままで誰も居なくなった裏通りの店の中で
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)