ひとり あおぐ/木立 悟
 






鏡のなかに咲く花へ
何も見ない花が集まる
触れようとしてはあきらめ
周りに次々と根付いてゆく


給水塔をめぐる曇
青は染まらず
青は分かれ
壁に塗られたしたたりを照らす


泡の音が蝶になり
川の流れに消えてゆく
黒と無音に溶ける金
何かを抱え 離さない径


影をひとつひらくたび
こぼれ落ちる実と震え
夜の姫 夜の姫
腰布おおう霧を晴らせ


窓の底の
鳥の死骸
羽根になる 羽根になる
空に 消える


塩のわき水に移る稲妻
湿地をすぎる雨の群れ
かたまりのはざま 曇の足跡
原を原へ置いてゆく声


金は緑 緑は金
やがてどちらでもないものになり
それでもそれぞれにかがやきながら
かさなりにかさなりに身をよじる


花に埋もれた鏡に降る雨
曇が曇へ瀧のように落ち
暗くさかさまの飛沫を散らし
静けさはひとり昇りつづける






























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