夏、プールにて。/時子
夏の暑さに敗けない熱視線で、僕は君を見つめる。
錆びて塗装の剥がれたフェンスが、昼間の熱を残していて手に焼き付くように熱い。
月が浮かぶプールにソレはいた。
あの夏、僕は人魚に出会った。
*****
「ほんと、残念だったなぁー」
さして残念そうでもなく、顧問の鈴木はクーラーの効いていない職員室でうちわをパタパタ揺らしながら言った。
派手なポロシャツの腹の辺りが汗でべったりと濡れて張り付いている。とてもじゃないが、運動部の顧問とは思えない体つきだ。
「大会前に事故なんて…。お前には先生方も期待してたんだ。…まぁ、仕方ないな。松葉杖持って
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