歪み/灰泥軽茶
 
山の中で

あっを聴いたらだめだ

それは何かの始まりであるかもしれないが

私自身の終わりを意味する予感が

鳥肌ともに飛来する

その人工湖のほとりでは

山奥なのに車の発車オーライの名残りがいつも漂っている

そんな所で休憩なんかをしちゃいけないのに

放心していると獣と人が合わさった声が聴こえてくる

そんな声なんて聴いたこともないのに

ちゃんと知っている

鎖と鞭を使いこなす団長がそこまで来ている

あわててその場を逃げてもうこんな場所を来るまいと

固く決心するのだが

いつのまにか忘れて

呑気に辿り着いてしまいぞっとする

人工湖の水面はひっそりと滑らかに

そっくりそのまま

私と空と周囲の山を映しだしている
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