立腹記/煙と工場
 
ぼくはとてもいらいらしている
そのいらいらといえば
とても言葉では
表現できないほど

(などと言いつつ
 立派に
 言葉になっているではないか!)

そのことばを
手ににぎろうとすれば
さらにと砂になって
崩れ落ちる

(などと言いつつ
 立派に
 塊になっているではないか!)

両義性のワンダーランド
その狭間に縛られて
僕は身動き一つ
とることができない

(などと言いつつ
 立派に
 手足を動かしているではないか!)

なんたることだ
なんたることだ
ぼくは何ひとつ
伝えることなんか
できなかったのだ

(などと言いつつ
 立派に
 伝えているではないか!)

ぼくはぼくに立腹する
不甲斐ない精神に
醜い身体に
目に見えない憂鬱に

(などと言いつつ
 立派に
 安眠しているではないか!)
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