或る命について/HAL
切れない
そのために呼吸器官を切開し
誰かが痰を吸い取り出してやらなければならない
もちろん知能は三歳児のままだ
いまは息子が嫁として選んだ女性がその役割を担ってくれている
別にぼくは美談としてこれを書いている訣じゃない
色々な意見や反論や賛同もあることは分かっている
でも同情や憐れみは辞めて頂きたい
そんなものを求めてはいない
でもぼくはただひとつのことだけを信じている
どんな命でもそれは祝福されるものでなければならない
ただそれを言いたいだけでしかない
他に何も加えることも補足することもない
どんな命でも受精すればこの世に産まれ
祝福されるべきだと想っているだけだ
少なくともぼくと元嫁も そして7歳の息子も
娘を育てていくのに苦労したことも言い合いをしたことも
産まなければ佳かったと言ったことも 想ったことも
唯の一度もない
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