ポリ塩化ビニールの塔/黒川排除 (oldsoup)
雨の日に外に出るということは
とてつもなく無謀なことでもある
それが傘を差さないで行くことなら。
こんなに舗装されていない道路でも
一切の水滴は留まることなく弾かれ
うすぼんやりと曇った空を映すものである
そのまた上にまたがったまま震える電線、
映すものは幾許の夢のように
子供の長靴にかき乱されている。
彼が渡りたいと思った綱は再び夢を
彼が過ぎ去った後にむくむくともたげるのだ
だがいたずらに飛び散った水滴は
同じ夢を見るとは限らぬ。
それらがただ流れたいと思った場所を
それらがために留まらすことも出来ずに
まったく無力であるところの拳を
傘を柄を通して握ることでさえ
同じ高さを持たぬ限り正当ではない。
もしこの空が親骨だとして
それを畳むことが容易であるならば
街中にいくつもの塔が建ち並ぶだろう
同じ夢を見る同じ人たちの同じ塔、
ひょっとしてこの子も雨蛙なのか。
見てほらこんなにも空が暗いと
まるで部屋に閉じこもってるみたいだ
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