背負って生きられるのかね/影山影司
 

 次に口を開いたのはトットだった。
「じゃあ、あなたも、生やしてみる? 私と同じ株を、私の体ごと、繋げてみる……? シャム双生児みたいに、二人で一つになって、それで、生きていく?」
 トットの吐息が、カミオの鎖骨に当たる。
「同じ物を食べて、飲んで、同じ物を見て、同じ時間に寝て……怪我したら同じ痛みを感じて、右手と左手がお互いを支えあってるように」
「二度と離れないように」
「そう、ね」

 カミオの両手が、背中のメッセンジャーバックの口を開けた。
 その中身を指先で探り、少し力を入れて、抜き取る。土から顔を出した根は、生まれて一度も触られたことない、生娘のような姿だろう。指先でその感触を楽しんで、ぼんやりと思う。
 一歩踏み出すとは、こういうことなのだと。
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