蛇口/時子
 
小さい時から、人の背中に蛇口が見えた。

それは、僕が小学校に上がるか上がらないかぐらいの頃だったと思う。
その日はとても暑くて、公園で一日中友達と駆け回って遊んだ僕は、夕方、皆が帰ってしまった後、喉が渇いて仕方がなかった。

水が飲みたい。
お腹いっぱい、たぷたぷになるくらい水が飲みたい。

そう思っていると、目の前に蛇口が現れた。
それは、ベンチに腰掛けるおじいさんの背中にニュッと生えていた。


そのおじいさんを僕は知っていた。
よく、赤いリードで繋いだ白い犬を連れてこの公園に散歩に来ていた人だ。犬に触らせてもらったこともある。とてもなつっこい…そう
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