雨/アマメ庵
 
彼は着いてきた

ぼくはあちらこちらへ行く
黒い森に行くときも
白い街に行くときも
彼は着いてきた

彼がいつからついて着たのかわからない
気がついたときには ぼくの少し後ろを歩いていた
なぜ着いてくるのかと問うたら 彼は少し笑った
緑の島に行くとき ぼくは二人分の船賃を払った

いつも後ろをついてきた彼は 船上で初めて横に立った
彼は何も言わなかった
目が合うと 少し笑った
風がコウコウと吹いて ずっと海を見ていた

赤い山に登るとき
彼が着いてこなかった
少し探してみると 彼が足を抑えて蹲っていた
彼は裸足だった
ずんぐりとした足は土に汚れ 血が滲んで
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