涼をとる/佐東
ムには
まさに黒山の人だかりで
順番待ちの列もできるほどだ
近くのOL スーツ姿の営業マン 作業服のお兄さん タクシーの運転手 市大の学生さん
小さい頃
年末のお買い物には必ず
この商店街に家族で来ていた
その時のことを髣髴とさせる
その列に
一度だけ加わったことがある
あまり広くない店内
扉を開けると さあーーと
とても良質な涼風が
火照った身体を やさしく撫でてゆく
ふと見ると
ちいさな涼が
カウンターの上の
ちいさな赤い お座布団に
ちょこんと正座していて
真っ赤な顔をして
口を真一文字に結んでいる
その姿が
あまりにも いじらしくて
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