君は英雄なんかじゃない (歌うたいと詩人と絵描き)/ホロウ・シカエルボク
彼らは全力を尽くしたんだ
歌うたいと詩人と絵描きは
また悲しそうに首を振る
そうしていれば主張が通ると思っているみたいに
「あなたとはいくら話してもきっと判り合えないと思うんだ」申し訳なさそうに歌うたいが言う、そういうことを言うのはだいたい彼の役目なのだ、歌うたいは率直に話を進めるものだと、たいていのやつはそう思っているのだ
「個々の生活に口を出す権利なんか君にはない」詩人が言う、ようやく口にした言葉がそんなことかよ、と俺は思う
絵描きはノートを開いて何事か書きつけている、まるでもう俺に関心などないという態度を見せながら
でも決して席を立とうとはしないのだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)