岬の家/佐東
 


真夜中の波打ち際で 全身を青白く夜光虫のように発光させて 少女のような声色で はしゃいでいる祖母を見た と近所の漁師の語る声が 浜に打ち上げられているのを拾った 
それ以来 祖母を見たものはいない


食われちまったのさ 海に!

母さんは 鯨油をさしながら ぶっきらぼうに言い放つ
キッチンの床には 蝶番から溢れた油で ちいさな海ができている 窓から洩れる月あかりが 青白く反射している 母さんは 全身を青白く発光させながら 鯨油をさし続けている







風がとまって 二日目の午後
父さんから 手のひらに収まるほどの ちいさな古い鍵を渡された

お前
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