岬の家/佐東
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風の強い日 姉さんは洗濯物になる
海からの風は 姉さんを裏返したり表にしたりする
はたはたと身体の鳴る音にいちいち反応しては
子供みたいにはしゃいでいる
時折 砂混じりの風が当たると
途端に怒り出し
生乾きのままクロゼットの奥に入ってしまって
夕食まで誰が呼んでも出てこない時がある
海からの強い風を受けて ぐにゃり と曲がった防砂林 蛇行する道の傍らで 彼の岸まで手招きをするように寄りそっているハマヒルガオの群れが砂混じりの風をうける いきものの侵入を拒み ざわざわと うねる
姉さんのはなうたが遠くから聴こえてくる 砂に混じる 夕立のにおい 呼応するように 黒く
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