取り替え子/影山影司
 
うこうしているうちに私の意識は途切れる。酒の飲み過ぎだろう。気がつけば家のベッドで寝ていて、起き出すと妻に飲み過ぎだと怒られた。時計を見るともう昼近くで、その割にちっとも酒が抜けていない。

 どこかでぶつけたのか、深酒が原因なのか。唇の裏に口内炎ができていた。舌の腹で舐め取りながら、昨日のことを思い出す。不思議なことに、悠二の顔をろくに憶えていない。酒を飲んだにしろ、かなりの時間話したはずなのに。

 悠二の言葉だけが再生される。

 入院中、退屈だったんで優一の本を沢山もらったんですが、これがまた面白くてね。今まで、自分で本を買うことはもちろん、教科書以外開いこともないような子供だ
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