そこで風に撫でられた/ドクダミ五十号
 
渓流で渓魚と遊ぶ美しい装いはどんなおんなも敵わない

簡単には釣れないまるで釣り針が己の様に想像出来なければ

下流から釣り登るまるでけだものの様に

ふと気が付けば源流であるガレ場に至って

命を育む清冽な水に唇をそっと寄せる俺が居た

ああそうなんだ俺はこいつらと同じ命だと

魚篭は重く感じられ丁寧に焼いて食わねばなるまいと

俺は山を仰ぎ見た雲が山頂を撫でていた

命を喰らうその様を山は笑っていると思うた

妻子を置いてきた事などもはやどうでも良くなった

仕事さえもつまらぬ事だよなと山に言ってみる

すると涼しい風が送られてきた

そうか天気
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