そこで風に撫でられた/ドクダミ五十号
渓流で渓魚と遊ぶ美しい装いはどんなおんなも敵わない
簡単には釣れないまるで釣り針が己の様に想像出来なければ
下流から釣り登るまるでけだものの様に
ふと気が付けば源流であるガレ場に至って
命を育む清冽な水に唇をそっと寄せる俺が居た
ああそうなんだ俺はこいつらと同じ命だと
魚篭は重く感じられ丁寧に焼いて食わねばなるまいと
俺は山を仰ぎ見た雲が山頂を撫でていた
命を喰らうその様を山は笑っていると思うた
妻子を置いてきた事などもはやどうでも良くなった
仕事さえもつまらぬ事だよなと山に言ってみる
すると涼しい風が送られてきた
そうか天気
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)