空/佐藤伊織
ありがとー
ごめんねー
じゃあ
ちょっとそこどいてね
(風)
空間の穴を抜けた
轟々と吹く
舞い上がる粉塵
あのさ
今日
これ全部燃やすんだ
手首
暗い光
足の先の影
炎
「空が」
うん?
「空があんなに低い」
そうだね
空が
低い
まるで空が粉塵の海を覆うように
白い消しゴムで
虫たちが空を消していく
食べ尽くされた空が
夕闇にただれたように浮かんでいる
僕は
朝のスイカの皮を
放り投げた
さくりと
刺さった音のするほうで
真っ赤な夕日が走る
さくりと
消しゴム虫達が羽を一斉に
のばして空へ舞い上がる
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