天籟/
草野春心
透明な鍵盤に置くかのように
あなたの指が宙にとどまる
噎せ返るほどに暑い八月
そんな形で朝は始まる
夢のなかでそれは確かに
風靡く草原を鳴り渡っていた
細やかな弦をしとしとと震わせ
鳥や虫や石でさえ恍惚に導く音色で
今、あなたの唇がかすかに上向く
それがあなたの微笑み
決して空気を伝わることは無くとも
私の魂を打つただ一つの響き
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