岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
』である。少なくも『内なる美』を表現するということにどの道も変りはない。ただ写実が写実と言われるのは、自然物の形象の中に美を見て自然の形を追うことが、すなわち美を追うことであるからである」p.83
ここで、写実に対する重要概念を述べている。「自然物の形象の中に美を見て」というのは、まさに、美である自然物⇔自然物から美を見出す画家の関係が示されている。そうした画家による美の見出しが「心の問題」なのである。だが、ここで一つ疑問を呈したい。自然物から美を見出すことがごく自然であるかのように劉生は述べているが、果たしてそうであろうか。つまり、自然物の形象の中から美を見られないこと(可能性)を劉生は
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)