雨の日の猫は眠りたい 2013/たま
葉月の昼下がりのどうしようもなくもてあました窓の
したで、たったいま、わたしにできることをすべて思
い浮かべてみても、ただ、雨の日の猫のように四つ足
を投げだして眠ることしかできなかった。
そうして浅い夢をいくつも、いくつもわたり歩いては、
エノコログサの生いしげる夢の戸口に立ち尽くして濡
れていた。
長い雨だった。
いつまでも犬のまま雨に濡れて生きるのはやめようと
思った。いないはずの恋人、もしくはあり得ないわが
ままをどこまでも、どこまでも、追いかけていたいわ
たしはきっと雨の日の犬にちがいなかった。
もう、いいと思った。
芯まで濡れたこのからだを乾かさなけれ
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