黒い蝶が飛びだった。虹はまだ架からない。/創輝
 
 その魂は羽を持っていなかった
月にたどり着くすべを持たない魂に 黒い蝶は燐粉(りんふん)を降りかけた
黒い蝶は その魂たちを引き連れて
月の元へ飛んでいった

何もせずに黙って見つめていた地球(母)は
黒い蝶に「仕事」という光を与えた

旅立った白い蝶は母の元へ帰る

旅立った黒い蝶は戻ってこない
だから母は黙って涙する

私たちが大地に横たわり 黒い蝶が迎えに来たら
地球に「愛してる」と言って
大地に雨が降ることを 母を泣かせることを少しだけ憂いて謝り
月へ飛び立たなければならない そして蝶に祈らなければ

どうか 大地の元へ帰ってきてやってね
そしたら色んなところで 虹が見えるだろうから
月からでも見えるくらい
大きい虹になるだろうから

黒い蝶が また旅立った

虹は まだ架からない 早く架けられるといいね、地球(おかあさん)
戻る   Point(4)