おれは番犬だ/殿岡秀秋
毎朝マッサージをする
カミサマはつやつやでしわしわの腕で
春から夏へのように伸びをする
カミサマにもストレスがある
魔物のような口の礫で
おれを攻撃するのはそのはけ口
わかっていても心臓に当たると痛い
視えない鎖を切って逃げ出したくなる
毛並の乱れでカミサマは察知する
「だったら野良犬になりな」
凍る声で言われておれはうずくまる
会社の犬であったころより
気持が落ちついて水もおいしい
カミサマの口もいつかは重くなる
通りすがりの人に挨拶がわりに軽く吠えて
今日のところは番犬のまま
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