翅虫/マーブル
 
のには理由があるって本当
車輪にもつれた感情を
ビルのちいさな灯りを
電車に揺られる人達の疲れた顔にふきだしマーク描いたり
そっとしずかに助け合うスカートの下の翅虫になりたい





今日やさしくなりたいと思ったのは
父がむせび泣く夢をみたからで
会社から帰ってきた父を玄関で待っていたのも本当のことで
音楽をカーディガンのポケットに忍び込ませて
浮遊感にひたっていたのも
しばらく行っていない東京の夜景を思い浮かべていたのも
本当の本当のところで
うわのそらだったわけで
通り過ぎる時間を掴めないかと試みたよ
すぐに砂時計の砂は落ちていったよ
それでも思い返す
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