ひとつの愛の死/ただのみきや
愛は心臓ではありません
ひと刺しくらいで死にません
悶え苦しみ血を流し
こと切れるまで幾日も
血が乾くまでに幾月も
断末魔のその姿
もとに戻るには幾年も
愛は蛙じゃありません
解剖なんてしないで下さい
何故? とふるえる唇に
静かに指をあてましょう
謎のままに喪布で包み
砂漠の真中に埋めましょう
決して墓標など建てないように
やがて幾星霜の向こう側
幻の湖が現れて
辺りを緑に変える頃
まるで生きているかのよう
美しいミイラを見つけます
まるで生きているかのよう
あの日の愛の在りのままを
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